7月10日(金)16時より行われた前田建設と安岡の漁師との話し合い。安岡漁港にて。

安岡の漁師は、環境調査をしないでくれと、いいましたが、
前田建設は、環境調査をします。
と平行線。

また、来週に海の調査をすると宣言しておわりました。

前田建設は、地元の漁師、住民の意見を聞く耳をもっていません。

反対の声を大きくしなければ、賛成したものと都合よく解釈して建設をゴリ押ししてきます。

それが改めてよくわかりました。


前田建設工業(株):「下関市安岡沖洋上風力発電プロジェクト」ホームページより抜粋


前田建設工業(株)の計画は適正なのか?

 前田建設工業(本社・東京)が山口県下関市に計画している安岡沖洋上風力発電事業計画について、地元住民の強い反対運動もあり環境調査は一時休止状態が続いている。この洋上発電計画であるが、これまでオープンになっている記事を確認する限りにおいて、前田建設工業の実施してきた環境アセスは、本当に適正といえるのか疑問を持たざるを得ない。その理由は次の通りだ。

 

1. 漁協との20年間8億円提供の約束と手付金(裏金)1千万円支払いの事実

   前田建設工業(本社:東京)は、環境アセスメント調査に先立つ数年前に、山口県漁協下関幹部に、海域の借り上げ漁(迷惑料)として20年間で8億円、年間4千万円の支払いを約束した。すでに1千万円が下関漁協協励会に振り込まれたことが明らかになっている。この1千万円、一般の漁業組合員はまったく知らされていなかった。そのうえ、旧安岡漁協の漁民が洋上風力反対でまとまろうとしたその時、県漁協幹部は「建設ができなかったら、前田に2~3倍にして返さないといけない、それは一般組合員が支払うことになる(なお、山口県漁協は後日、このような事実はなかったと発言を撤回した)」と言って建設に賛成するよう強要した。

 

   前田建設工業は、これまで地元説明会や調査現場などで住民に対して、「洋上風車建設はきまった訳ではない」「環境調査をやらなければわからない」「だから調査をやらせてくれ」と言ってきた。しかしその裏では建設を前提として、漁協との間に20年間8億円の支払いの約束と、手付金(裏金)1千万円を支払っている。これは明らかに、建設が100%可能であることを前提とした地元対策費(漁組幹部懐柔費)、言葉を換えれば賄賂だ。これについて未だに前田から説明はないのはなぜなのか。「地域住民の理解を得ながら進める」と、マスコミ各社に言っているのは前田建設工業自身ではないか。


 2. 改正アセス法施行直前の駆け込み申請

   改正環境影響評価法(改正アセス)は2011 (平成23)年4月に公布され、2013 (平成25)年4月に施行された。この改正法では、戦略的アセスメント(SEA)の導入など重要な制度改正がおこなわれ、「配慮書」の作成義務などが追加された。この配慮書は、事業の実施段階(現在、前田建設工業が安岡地域でおこなっているアセス)でおこなう従来の環境影響評価とはことなり、実施事業に先立つ計画立案の段階で、環境配慮を可能にするため欧米の事例に倣って導入したものだ。

 

   旧アセス法と改正アセス法の大きな違いは、旧法の環境影響評価は事業実施を前提として「方法書」の縦覧から開始されるのに対し、改正法では事業の中止を含む複数の計画案の環境影響を検討する「配慮書」から開始するもので、「配慮書」が承認されてから「方法書」の作成に着手することができる、という内容となっている。「配慮書」では、事業の位置、規模に関する複数案の検討と、事業の中止(ゼロオプション)を含む評価をおこなう義務がある。評価には地域住民からの意見聴取とその意見反映も入る。

 

   前田建設工業(東京)が安岡沖に洋上風力をつくる動きを開始したのは、2009 (平成21)年の基本調査からで、2011(平成23)年2月からは風況調査を、2012(平成24)年6月からは海底地質(ボーリング)調査を実施している(下図表参照)。  

   改正法アセスによれば、2013 (平成25)年4月以降の第1種事業の場合、「配慮書の作成」が義務づけられている。安岡洋上風力発電計画は第1種事業に入るため、「配慮書」を作成しなくてはならない。しかし、前田建設工業は改正アセス法施行直前の3月に「方法書」を提出・縦覧したため、わずか1~2週間の差でこの改正アセス法適用の義務を回避した。

 

   我が国における洋上風力発電実証試験の本格稼働は、平成24(2012)年3月の千葉県銚子沖3kmが初で、平成25(2013)年6月の北九州響灘沖1.4kmが2番目である。これらの風力発電施設は実証試験機として、現在も研究・評価のただ中にある。

 

   ところが、前田建設工業(東京)は、実証試験の結果が出ていない段階から、我が国初の商業洋上風力発電計画を立ち上げている。しかも、実証試験機よりも規模を大きく(方法書:3000kw/基×20基・ハブ高100m・ローター直径130m)している。風車はまだまだ未熟な技術であろう、しかも環境への影響が不明な点も多い。前田建設工業(東京)は、我が国最初となるこのような事業こそ、改正アセス法の「配慮書」によって評価されるべきと判断しなければならなかったのではないか。